【福島】第66次南極地域観測隊の同行者として、福島小学校の長浦紀華校長(55)が決定した。12月5日に日本を発ち、2025年1月2日から約1カ月間昭和基地に滞在し、現地から同校児童に向けたリモート授業も予定する。長浦校長は「温暖化や地球規模の環境課題がある中で、南極でどのような人が何を研究しているのかじかに触れたい気持ちがあった。子どもたちには本気で挑戦する大切さを伝えたい」と話している。
3月まで函館えさん小校長を務め、4月から現職。現役教員を対象にした派遣プログラムに応募し、全国から長浦校長ら2人が選ばれた。社会科教諭として中学校での勤務が長く、「世界中の遺跡や文化財の全ては無理でも自分自身で見聞きし、肌で感じて本物を伝えたいと考えてきた」とし、特に34歳で訪れたアフガニスタンに刻まれた戦争の現実が価値観や教育観を大きく変えたという。
若い頃から「三大洋・六大陸」を訪れることを目標にしてきた。南極は渡航方法が限られ、教員派遣プログラムへの思いを持ち続けてきた。昨年秋の募集通知にも管理職としての立場や大量の必要書類の作成など〝できない理由〟が多くあったが、「最初で最後のチャンス。長年の夢を挑戦しないで諦めたくなかった」とし、函館市教委の理解も得て応募を決断。1次選考を通過し、面接にも全力で臨み、1月に届いた内定通知には「近年にない達成感」を味わったという。
3月には長野県内のスキー場で極地滞在を想定した訓練に参加し、体力的にも過酷な状況も「若い人たちに支えられた」と乗り切った。福島小着任後も渡航に向けた準備を続けている。6月24日に第66次隊の概要が公表された。最初に直接伝える機会があった3年生児童たちは驚きの反応と合わせて大喜びしたといい、「目がきらきらしていて、『南極』という言葉が子どもたちに夢や興味を与えると実感した」とうれしさが倍増した。
12月5日に日本を出発し、オーストラリアから南極観測船「しらせ」に乗船し、25年1月2日に南極に到着。同21、28日には同校向けの授業を計画し、基地にいるさまざまな職種の隊員の様子や自身の体験を児童に発信する。帰国は同2月24日。
到着時の南極は終日太陽が沈まない白夜の最中。野生のペンギンの様子やオーロラ観測などにも思いを膨らませる。長浦校長は「地図や地球儀だけでは分からない世界の体験を楽しみにしている」と話している。(今井正一)