台風10号通過前後の高波で、函館市東部の戸井、恵山両地区の海岸には、天然コンブなどの海藻が大量に打ち寄せた。冬場の爆弾低気圧の影響で繁茂が良くない中での台風直撃でさらに漁模様は悪化。「寄ってくるコンブの本数が少なすぎる。(商品にならない)細かい海藻ばかりだ」と漁業者は不安を募らせている。
戸井地区の新二見町では7月20日から始まった天然コンブ採取が9月2日現在で4回にとどまっている。漁協関係者によると、年明けの大しけで根こそぎ流されるなどしたため、コンブそのものが極めて少ない。燃料代がかかる乾燥機を使わないで天日で乾かせるように、例年以上に天候条件を見極めた漁を強いられているため極端に出漁回数が減っているという。
コンブの身入りが良くなる9月に向けて漁のばん回を期待していた矢先、台風10号の高波に襲われた。「いつもであれば台風でコンブが浜に寄るのは自然の恵みだけど、今年は意味合いが違う」(漁業者の女性)。新二見町の海岸は2日、海藻で埋め尽くされ、漁業者らが丁寧に拾い集めている。
近所の漁師、松本和彦さん(61)は「いつもだと20回はコンブ採りをしているけど今年はだめだ。(成長具合は)全体的にぱらぱら。寄ってくるコンブも少なくて身も薄い」。コンブ漁30年の男性(69)も「こんなにコンブがないのは初めてだ。それでも日々の生活のために浜に来て頑張らないと」と話していた。(田中陽介)