函館市富岡町の会社員、内藤重彰さん(61)は、幼年期の記憶をよみがえらせようと、亡き父・重春さんが昭和40年ごろに家業の牛乳配達で使用していた軽三輪トラック「マツダK360」を購入。荷台に幌や看板をつけて忠実に再現した。今月長野市で行われた日本最大級の屋内型ノスタルジックカーイベントのコンテストで「グッドカスタム賞」を受賞。内藤さんは「子どものころに乗った記憶はほとんど無いが懐かしい」と感慨深く話す。
内藤さんは3人兄弟の末っ子で、幼少の時に車の前で3人そろって撮影した写真を見た時、車の具現化を考えた。インターネットで車を詳しく調べ、東洋工業(現マツダ)が生産・販売したK360と分かった。1959(昭和34)年から発売され総排気量は356㏄。全長2メートル98センチ、幅1メートル28センチ、運転席の高さ1メートル41センチ。2人乗りで運転席と助手席の窓はバスのように上下に動かすスライド式。フロントガラス下には車内に風を送る窓が設けられている。
昨年10月に静岡県の自動車販売店から車検を受けた状態で購入し、七飯町で自動車のリストアを手掛ける業者に依頼し函館へ搬送、シートや塗装などをきれいにし、荷台に幌をつけた。さらに重春さんが配達していた乳製品のメーカー、北海道乳業から許可を得て略称「北乳」と当時の製品「ストロング牛乳」の看板を付けて完成した。
5月3~4日に長野市で行われた「Gulf ながのノスタルジックカーフェスティバル2023」(実行委主催)を知り、参加を応募。ノスタルジックカー大賞コンテストで「グッドカスタム賞」を受賞し、会場で展覧された。「ここまできれいにして良かった」と内藤さん。
長男で谷地頭町在住の要一さん(68)は「配達は自転車、バイクで行っていたが数が増え、アイスクリームなどを早く運ぶために初めて買った車だった。乗った記憶はあまりないが、風を受けて横転したことは覚えている」と笑顔。次男で神奈川県川崎市在住の晋二さん(64)は「何回か乗っていると思うが、こんなに小さかったのかなと驚いた」、重彰さんは「時速50キロぐらいまでは出るが、晴天時にしか乗らない。イベントで展示の希望があれば応えてみたい」とかわいい車体を見入った。(山崎純一)