大詰めを迎えたTPP(環太平洋連携協定)交渉で、日本が農業分野で譲歩する見通しが強まったことについて、道南の農家からも将来の経営不安を懸念する声が広がっている主食用コメや牛肉の輸入増加により、再生産できなくなる恐れがあるからだ現場は農産物5項目を関税撤廃の例外とするとした国会決議を守り、粘り強く交渉を行うよう政府に訴えている
TPP交渉は7月29日~1日(日本時間)に米ハワイで閣僚会合が開かれ、今回で大筋合意を目指すとされる日本は各国と個別に関税の扱いをめぐって協議を続けている道南でも関心が高いコメは米国から7万トン超の無税輸入枠を設けるほか、牛肉は現行38・5%の関税を15年かけて段階的に10%程度まで引き下げる方向と報じられている
北斗市米穀振興会会長の小山内吉美さん(63)=同市開発=は「日本が主張した米国から5万トンでも多いのに、7万トン超とはあぜんとするばかり実現すれば稲作農家には大打撃で、コメ作りの先行きが見えない」と話す
「譲歩するなら国会決議違反だ」こう語気を強めるのは同市清水川の森隆志さん(50)最高の「特A」評価を受けた道南ブランド米「ふっくりんこ」を中心にコメ15ヘクタールを作付ける「輸入米が大量に流入すれば、ブランド米でも影響は避けられないだろう価格面で競争できないのは明らかで、品質や安心感で勝負するしかない」という
厚沢部町稲見でコメ12ヘクタールを栽培する佐々木宏さん(62)も、一次産業が主体の桧山管内への影響を懸念する「国が掲げる地方創生に逆行する動きで、輸入増で農業地帯は疲弊する」と指摘する
輸入牛肉は、酪農家の収入を支えるホルスタイン種の雄牛と競合するため、打撃が大きい七飯町軍川で搾乳牛75頭、育成牛75頭を飼う小森久司さん(64)は「生産者乳価の値上げがあったものの、輸入飼料や生産資材価格が高止まりしており、個体販売が堅調なので経営を継続できている雄子牛の価格下落への不安が募るばかり」と表情を曇らせる
来年夏の参院選への影響について、渡島管内のある農家は「TPP交渉結果によっては、農村票が自民党から離れていくかもしれないただ、選挙はあくまで候補を見て判断するので、影響は限定的だろう」とみる(山崎大和)