北海道新聞函館支社で嘱託看護師として勤務していた女性(当時40)=2015年に死亡=が、同社の男性社員2人からのセクハラが原因で悩み自殺に追い込まれたとして、遺族が22日、同社と社員2人に計約8597万円の損害賠償を求める訴訟を函館地裁に起こした。さらに遺族は同日、社員2人が函館地検に書類送検され、今年3月末に不起訴処分となったことについて、函館検察審査会に対し、社員2人の刑事不起訴処分を不服とする審査申し立てをした。
訴状によると、2014年12月8日、同社の男性社員2人が函館市本町の居酒屋とカラオケ店で、女性に対して体を密着させてみだらな言葉を発したほか、体を押しつけてソファに押し倒そうとしたり、衣服の上から体を触るなどの暴行を加えたとしている。
女性は体調を崩し、15年2月21日に自宅の火災で遺体で発見され、物置からセクハラに関する資料などが見つかった。両親は、女性が同社の2人からセクハラを受けたことをきっかけに自殺した可能性が高いと訴えている。
提訴後、女性の父親(68)と植松直弁護士が市内で記者会見した。父親は「セクハラが起きたら起きたで毅然とした対応を取っていれば、娘にとっては不満があったとしても、ここまで大事に至らなかったと思う。民事裁判、検察審査会などで審査してもらい、可能な限り娘の遺骨にいい知らせをしてあげたい」と述べた。
また、植松弁護士は「道新はセクハラ行為はなかったとしながらも、(女性に対し)男性社員2人を謝罪させる場を設け、そこで2人は謝罪している。もしセクハラ行為がなかったのであれば、どうして道新は2人を謝罪させたのか。2人は何について謝罪したのか。道新は事実を明らかにすることを使命とする報道機関である。この理由を自ら明らかにすべきだ」とした。
提訴を受け、北海道新聞経営企画局は「訴状が届いておらず詳しい内容は把握していないが、民事訴訟を提起されたことは遺憾。遺族がセクハラ行為はあったとして、社員2人を刑事告訴した事件は嫌疑なしで不起訴処分となっている。遺族の主張に対する当社の考えは裁判の中で明らかにしてまいります」とコメントした。