函館出身の怪奇幻想ライター、朝宮運河さんが厳選したホラー小説を収録した「再生 角川ホラー文庫ベストセレクション」(角川ホラー文庫)と「宿で死ぬ 旅泊ホラー傑作選」(ちくま文庫)が、相次いで発売された。さまざまな状況下で起こる質の異なる恐怖を凝縮した短編集だ。(今井正一)
朝宮さんは函館中部高、同志社大文学部卒、同大学院文学研究科博士課程前期修了。本の情報サイト「好書好日」での連載「ホラーワールド渉猟」をはじめ、ホラー分野を専門とした書評や作家へのインタビューで活躍している。
2月に出版した「再生」は、1993年に刊行が始まったレーベルの歴史を凝縮した一冊。ある秘密を持った女性と結婚した大学教員を描いた綾辻行人さんの表題作や、岩井志麻子さんによる明治期の閉ざされた村社会を描いた「依って件の如し」など8編を収録した。
一方、6月刊行の「宿で死ぬ」は、昨年出版した「家が呼ぶ 物件ホラー傑作選」と対をなすアンソロジー。遠藤周作さんが国内外の宿泊先での体験をつづった「三つの幽霊」、寂れた温泉宿に泊まった男女に迫る恐怖を描いた福澤徹三さんの「屍の宿」など11編を収録した。
朝宮さんは「『再生』はこれからホラー小説を読んでみたい、という方にぴったりの一冊でタイプの異なる怖さが味わえる。『宿で死ぬ』はひなびた温泉旅館やしゃれたリゾートホテルなど、さまざまな宿泊先が登場する11編を厳選した。コロナ禍で旅行が難しい中、ちょっと不思議な旅行気分を味わっていただけるとうれしいですね」と話している。
ともに文庫判。「再生」は336ページ。748円(税込み)。「宿で死ぬ」は320ページ。990円(同)。9月18日には角川ホラー文庫ベストセレクションの第2弾として「恐怖」が発売となる。