土方歳三(1835~1869年)が箱館戦争を生き延び、ロシアへと渡るというストーリーが展開する歴史ファンタジー映画「歳三の刀」が日ロ合同制作で進められている。2021年に函館を含む両国で撮影し、22年の公開を目指す。ロケハンのため来函した増山麗奈監督(43)=一般社団法人ユーラシア国際映画祭代表理事、東京都日野市=は「コロナ禍で疲弊した閉塞感を斬り、希望をつくる作品としたい」と話している。(今井正一)
同法人は日ロ双方の映画を両国で配給、上映などを手掛けている。近年、ロシアでは日本映画への関心が高まっているといい、日本の文化を発信する作品をつくりたいと増山監督が企画や脚本を手掛け、準備を進めてきた。
物語は、現代のウラジオストクで発見された刀の持ち主をたどるところから始まる。箱館戦争で負傷し、ロシア正教会にかくまわれた後にロシアへと渡った土方が持つ刀は隕石(いんせき)でつくられているという設定で、交わると絶大な力が生まれるという二振りの隕石刀を巡る話が展開する。土方の渡航を助ける役を豪商、佐野専左衛門としたり、榎本武揚が明治時代にサンクトペテルブルクに渡り、ロシア皇帝の持つ隕石で作られた刀剣を見たことなど、史実から着想を得た設定を織り交ぜる。
土方役はロシア語も堪能な山本修夢さん、佐野役は辰巳琢郎さんら、主要キャストは決定済み。日ロ双方をつなぐ名曲「百万本のバラ」で知られる加藤登紀子さんも本人役で出演が決まった。函館や東京・多摩地区、京都、長野などで撮影し、ロシア側でも撮影を進める。
12、13の両日、函館に滞在した増山監督は土方歳三函館記念館や市中央図書館、函館ハリストス正教会などを回った。「北へ北へと渡った武士たちの思いを海に重ねた。大きな使命を持ち、何を思い、戦ったのか、改めてその思いを反映させたい」と話している。
一部キャストなどは現在も募集しているほか、箱館戦争時の時代考証への助言も求めている。詳細は公式サイト(https://toshizonokatana.com/)へ。