函館出身の作家、佐藤泰志(1949~90年)の小説を原作とした映画「草の響き」の撮影が5日、函館市内で始まった。斎藤久志監督(61)らスタッフ約20人が函館入り。初日は早朝から日没まで緑の島など4カ所で撮影した。
函館市民映画館シネマアイリス(本町)が手掛ける佐藤泰志原作の映画は5作目で、2018年以来。撮影期間は2週間程度で21年の公開を予定している。
同作は佐藤が79年に発表した初期の短編。文庫版の「きみの鳥はうたえる」に収録している。精神科に通う主人公となる「彼」は、治療のためにランニングを始め、路上で出会った若者と心を通わせるようになるストーリー。キャストは今後、発表する。
緑の島では3人の男女がスケートボードで遊ぶシーンを撮影。強風下で日没も迫る中、丸太を飛び越える場面など、周囲が暗くなるまで何度も撮り直していた。初日の撮影を終えた斎藤監督は「順調です。天気にも恵まれた。若者のシーンから始めたが、徐々に映画が見えてきた」と話した。
企画・製作・プロデュースを務めるシネマアイリスの菅原和博代表(64)は「今年は佐藤泰志没後30年で、コロナ禍の中だが映画にできることが何かあるはずだと製作を決断した。函館のボランティアも東京から来たスタッフも一生懸命取り組んでくれていて、必ずいい作品に仕上がると手応えを感じている」と話していた。(今井正一)