元函館地方気象台職員(現在は札幌管区気象台職員)の山本竜也さん(40)=札幌市在住=が、新刊「父は帰ってこなかった 北海道空襲で亡くなった人と残された人たち」を自費出版した。1945年7月14、15両日の北海道空襲では、犠牲者一人一人に歩んできた人生があり、その家族にあった事実を取材を通じ、丹念に掘り起こした力作だ。
山本さんは2012年4月から16年3月まで、函館地方気象台に勤務。その傍ら郷土史研究にも力を入れ、著書に「北海道空襲犠牲者名簿」(11年)、「寿都五十話」(14年)、「南後志に生きる」(16年)などがある。今回は戦争で家族を失った人たちが、事実をどう見つめ、折り合いをつけ、その後の人生を歩んだのかをテーマに、一冊の本にまとめた。
全4章構成。第2章では函館市戸井地区であった空襲で、祖母のハツさん、妹の浩子さんを目の前で失い、津軽海峡で沈没した第24号掃海艇に乗っていた母のいとこ野村勝次さんを亡くした後藤英夫さんを取り上げた。函館勤務時代の13年から約3年にわたって自宅や実家を訪ね、慰霊の旅に同行するなどして密着取材を重ねた。第1章では根室での空襲で父を亡くした山形県のきょうだいの思いを書いた。
第3章では、函館水産学校(現函館水産高校)の学生だった3人から、動員先の室蘭市で遭った空襲と艦砲射撃について聞き取った。空襲で冷蔵庫に閉じ込めらた体験談など、生々しい証言が記されている。
山本さんは「北海道空襲犠牲者名簿では、名前や死因などを羅列しただけで、一人一人にある人生の物語を書くことができなかった。その後、複数の遺族から電話をもらい、故人に強い思いを抱いていることが分かり、記してみようと思った」と話す。戸井空襲はもちろん、道内各地で空襲の記憶と記録が薄れているといい、「北海道空襲の記憶がある人は連絡してほしい」としている。
A5判130ページで、300部発行。価格は864円。問い合わせは山本さん(090・5185・5723)へ。(山崎大和)