函館を舞台に大正ロマンを描いた小説「朧(おぼろ)の花嫁」(富士見L文庫)が、全国の書店で発売された。札幌市出身の著者、みちふむさんが発売当日の15日に函館市を訪れ、舞台となった国重要文化財「旧相馬家住宅」(元町)を見学するとともに、小説のヒットを祈願した。
ストーリーは大正時代の函館が舞台。顔にあざがあり冷遇されて育った主人公の伊知地清子が目の不自由な実業家・岩倉朔弥との政略結婚を命じられる。互いのコンプレックスを理解し合い、ひかれ合っていく2人。しかし、あざのことを知った岩倉家が清子を遠ざけようとする。朔弥と共に生きるため、持ち前の人柄と聡明さで試練に立ち向かう。
当時趣味で小説を執筆していたみちふむさんは、函館を訪れた時に感じた街並みの美しさに感銘を受けて「朧の花嫁」を執筆した。この時の印象について、みちふむさんは「芽吹く前の街路樹や雪解けの石畳が、演奏前の静けさのように新鮮で清らかで、これから訪れる季節の喜びと悲しみを思い起こさせている」と語り、登場人物たちが函館の街で暮らしている設定で書き進めることを決めたという。
完成した作品を小説サイト「エブリスタ」に投稿したところ、漫画サイト「めちゃコミック」が漫画化を打診。同サイトで大人気となり、書籍化につながった。
この日は作品の舞台となった湯倉神社(湯川3)でヒット祈願を行ったほか、旧相馬家住宅を訪れ関係者へあいさつした。みちふむさんは同住宅について「質素でありながらも気高く上品さがあり、いつ訪れても落ち着く」と話し、「函館の多くの人の協力があって完成した作品。手に取って読んでいただけると今後の励みになる」と語った。(中島遼泰郎)