介護をメインに、国際交流、伝統工芸もテーマに盛り込んだ映画「つむぐもの」が12日から、函館市本町22のシネマアイリスで上映される。監督は函館出身の犬童一利さん。映画初主演の石倉三郎さんや、日本や韓国で注目される若手俳優が出演し、介護職の本質的な価値を見つめていく。犬童監督は「『つむぐ』は今の日本に必要な音で、感じてもらえる」と話し、鑑賞をPRする。
物語は、病に倒れた越前和紙職人の剛生(石倉三郎)を、ワーキングホリデー制度を利用して来日した韓国人女性ヨナ(キム・コッピ)が思いがけず介護することになる。言葉も文化も異なる2人は反発し合う。一方で、介護施設で剛生を担当する介護福祉士の涼香(吉岡里帆)や蓉子(内田慈)は介護と理想の現実の間で悩んでいる。4人らの心境変化を通じ、人が最期まで自分らしく生きるために必要なことを見つめる。今年3月から全国で上映が始まり、福祉、介護業界から注目されている。
犬童監督は1986年生まれ。大学卒業後、会社勤めを経て映画の道へ。2010年、短編「フリーバイバイ」がショートフィルムフェスタニッポン2010に入選。14年、ゲイの大学生の葛藤を描いた「カミングアウト」で長編デビュー。つむぐものは3作品目。
「介護をテーマにする映画を作りたいと思ったが、ただ苦労を描くのではなく、現場の厳しい現状を表現したかった」と犬童監督。脚本は大学時代から友人という守口悠介さん。「想像以上に濃い展開を作ってくれた」と話す。主演の石倉さんについて「出演を快諾してくれたが、初めてお会いした時は怖かった。アドリブは一切カットしたが、黙々と演技してくれた」と話す。
「注目されている俳優が介護に取り組む姿を見て、若い人が介護職を考えるきっかけにもなってほしい」と犬童監督。初日は午後3時25分からの上映後、同5時15分からトークショーを行う。上映の問い合わせはシネマアイリス(0138・31・6761)へ。(山崎純一)