受け継ぐ味に愛情を込めてまた来たくなる雰囲気もご馳走
「蕎麦処 かしわ屋」がこの地に暖簾を掲げたのは98年前。前身となった同名の店の歴史は明治にまでさかのぼり、現在は創業者の大おいに当たる小川修司さんが三代目を務める。店の味を守るのに欠かせないのが、生地が香り立つよう白木鉢で湯練りする毎朝の製麺で、滑らかに仕上げる細麺はつるりと心地良い喉越し。カツオダシに秘伝の隠し味を加えたつゆをたっぷりと掛けて味わう「イカ天おろし」(700円)は、ふわりと衣に包まれたやわらかなイカ天の軽い口当たりに食欲を誘われ、もりもり食べれば夏の暑さも乗り越えられそう。16年前に店が火事に遭った時には閉店も考えたが「沢山の方に〝やめないで〟と言ってもらい、こんなにも思われていたんだと涙が出た」と小川さん。「味に愛情が込もっている」と毎日のように通う人や、妻の真智子さんとの会話を楽しみに訪れる人。味はもちろん、店主一家にまた会いに行きたくなる、そんな雰囲気が長年愛され続ける店を物語っていた。
(ハコラク 2019年9月号掲載)
蕎麦処 かしわ屋
函館市若松町26‐25
☎0138‐22‐7604
11:00~15:00(祝日は14:00まで)
日曜定休
昼時は禁煙
P有り(5台前後)