国宝の土偶〝茅空〟を常設展示
古代人の生活や豊かな心を感じ縄文ロマンに思いをはせる
「北海道・北東北の縄文遺跡群」が今夏にも世界文化遺産に登録される見通しで、注目が集まる「函館市縄文文化交流センター」。道内唯一の国宝「中空土偶」を展示する縄文文化の情報発信拠点として2011年、垣ノ島遺跡に隣接して誕生した。大船遺跡などの南茅部縄文遺跡群を中心に市内の遺跡から発掘された土器や石器などを展示し、争いもなく長年にわたり栄えた縄文時代の暮らしや文化、精神を今に伝えている。
著保内野遺跡から出土した「中空土偶」は、大きさは国内最大級で保存状態も良好。縄文時代後期の墓の副葬品で信仰や祭祀の実態を知る上で欠かせない重要な資料だ。「北海道式石冠」と呼ばれる持ち手付きの「擦石」、遺構や貝塚から見つかった哺乳類や魚の骨、貝殻などからは当時の食料事情がうかがえ、矢の先端に付ける「石鏃」からは近代に近い狩猟スタイルがすでに確立していたことが見てとれる。また、幼児の足形や手形を粘土板に残した土製品といった渡島半島南東部と石狩地方でしか発見されていない遺物も多数。学芸員の平野千枝さんは「見ても明確な用途が分からないものも多いですが、その分さまざまな考察と意見が交わされています」と話す。縄文時代の謎に触れ、想像をめぐらせる楽しさに浸りたい。
(ハコラク 2021年4月号掲載)
函館市縄文文化交流センター
函館市臼尻町551‐1
☎0138‐25‐2030
9:00~16:30
(4~10月は17:00まで)
休館日/月曜(祝日の場合は翌日)
月の最終金曜、年末年始
入館料/一般300円、学生・生徒・児童150円
※市内在住または在学の小・中学生と
未就学児は無料
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