臥牛山6月2日・消費税率引き上げ再延期
税負担を引き上げることと、国民が豊かな暮らしを営むことは一見して矛盾している。しかし、国家を維持していく上ではともに欠かせぬ視点で、時の政権は両方を天秤にかけて「暮らし」を取った▼安倍首相が来年4月の消費税率10%引き上げを再度延期し、2年半後の2019年10月に行う考えを表明した。毎日の負担が増えない面では歓迎すべきだが、国民生活を支える社会保障の充実は再び見通せない状況になった▼政府は10%引き上げによって2・8兆円程度を社会保障の充実に充てられると見込んでいただけに、再延期でこの確保が難しくなる。5月18日に決定した「ニッポン1億総活躍プラン案」では保育士の賃上げなどが盛り込まれたが、閣議決定は先送りされた。むろん財源の裏付けが乏しいため▼端的に言えば財政出動によって消費を促し、国民生活を潤す―というのが「アベノミクス」の本筋であるが、消費税率引き上げの先送りはこのサイクルが回っていない証明と言える▼「アベノミクスの効果は地方に回っていない」という言葉も、もはや言い古された感がある。国民の暮らしを守る上で、消費税に限らない税の在り方を考える時に来ている。参院選はその好機であろう。(C)