ビキニの水爆の威力は広島に落とした原爆の600倍とも750倍ともいわれ
ている。爆発実験後は島が影も形もなく消え去った。キノコ雲は高さ15キロ以上にも達し「死の灰」が広まった▼マグロ漁船「第五福龍丸」の船体一面にも降りかかった。海水中で水爆や原爆を爆発させると、海水が強い放射能を数千年にわたって持ち続け、人の体内にも入り込み、細胞を変化させる(民主主義科学者協会編「死の灰のゆくえ」)▼米国の水爆実験で「ピカドンに遇った」との第1報が入ったのは、62年前の3月。海域に約1000隻のマグロ漁船が操業、乗組員や魚の放射線を検査したが、真っ先に「死の灰」を浴びた福龍丸の機関長が半年後に亡くなった▼日本政府は米国の法的責任を問わず、被ばくの慰謝料として200万ドル(当時で約7億2000万円)を受け取っただけ。寄港時の放射線量測定器を使った検査も中止された▼被ばくの証拠隠しと疑われ、元船員や遺族ら45人は日米間の政治決着で被害救済の機会が奪われたとして、高知地裁に国家賠償の請求訴訟を起こした。広島を訪れるオバマ米国大統領は、水爆実験による被ばくの惨状も見聞してほしい。「ピカドン、死の灰」の叫びが聞こえてくる…。(M)