今季は雪解けが早く、農作業も早まった。農業に欠かせないのは肥料。中学生
のころ、裏山の畑に排せつ物の肥料(し尿)をてんびん棒の肥桶で運ぶ時、木の根につまづき、し尿を流してしまい、ひどく叱られた▼火星にただ一人取り残された宇宙飛行士が必死に生きる映画「オデッセイ」を見た。火星のサンプルを採集中、嵐が接近し、クルーは火星から脱出。行方不明となったワトニーは意識を取り戻し、火星での生活が始まった▼どうやって生き延びるか。まず食料。植物学者でもあるワトニーは水素と窒素を使って「水」を作った。次にトイレの排泄物を肥料にすることをひらめいた。「死ぬもんか」と救援隊が来るまで、懸命に野菜づくり▼昭和の半ばまで田畑の肥料は「し尿」だった。排せつ物に落葉などを混ぜ、発酵させて水のようになった「し尿」には水に溶ける有機物が多量に含まれており、農作物に吸収されやすい貴重な肥料▼厳しい環境の火星で生きていけるだろうか。ワトニーは火星の土とクルーの排せつ物でジャガイモ栽培に成功。嫌われものの3Kの一つが、生命体の生存に欠かせないことが立証された。欧露も先月、火星探査機を打ち上げた。火星のぬくもりが伝わってくる。(M)