ヤンゴンを走るミャンマー初の路面電車の映像を見た。昭和30年代に製造され、被爆の広島市内を走っていた電車で、日本が寄贈。車内には「原爆ドーム前」など停留所名の掲示をそのまま残して▼「前の人たち座ってください。後ろ
の人のことを考えて。これも民主主義のレッスンです。この国の問題の多くは、他人に譲ろうとする気持ちに欠けているところにあります」。総選挙で勝利
したアウン・サン・スー・チーさんの言葉▼ミャンマー(旧 ビルマ)は57年前にネ・ウィン将軍が実権をにぎってから軍事政権(本格的なクーデターは4年後)が続いた。当時、ビルマの大学に留学する予定だった筆者は、この政変で1年も待たされたあげく、留学中止に追い込まれた苦い経験がある▼女性たちは花が大好き。市場には色鮮やかな花がズラリ。花の髪飾りで、おしゃれを楽しむ。スー・チーさんは自宅軟禁中も常に花の髪飾りを離さなかった。まるで民主化のシンボルのように▼2月に民主化の花が一斉に開花する。市内6キロを走る被爆地の電車は異国の地で核廃絶を訴える。長い忍従の歳月に耐え、血のにじむ努力で手にした花電車として「民主主義は素晴らしい」と、ほほ笑むだろう。(M)