函館市企業局は、26日に開いた市企業局経営懇話会(三浦汀介会長)で、2025年12月から市電の全区間の乗車料金を40円引き上げる素案を示した。再改訂を進める「市交通事業経営ビジョン」での将来的な資金不足に対応するためで、素案が成案化されれば、消費税の増税を除くと1994年度以来、31年ぶりの値上げとなる。
市企業局によると、22年度に改訂した経営ビジョンに基づき事業経営を行っている中、電気料金や資材価格などの高騰、長期化した新型コロナウイルスの影響で想定を超える経営環境の悪化に陥り、26年度末は3億円を超える資金不足が生じる見通し。
同局は資金不足対策を講じるため、当初は17年度から10年間としていた経営ビジョンの計画期間を、24年度から3年間に変更する考え。コロナ禍が明け、市電の乗客や乗車料金収入はともに回復傾向にあるが、コロナ禍前の19年度の実績には及ばず、今後も厳しい状況が予想される。
引き上げ案によると、乗車料金収入は25年度が約9億9200万円、26年度が約11億3500万円を試算し、財源過不足額は25年度が約300万円、26年度が約3100万円の黒字に改善する見込み。
また、将来に向けた目標として、市電の利便性の向上のため、学生や高齢者を対象に割安な全線定期券の販売、運転免許返納者に割り引き制度の導入、同伴幼児の無料人数の拡大などを素案に盛り込んだ。素案は今後、同懇話会や8月下旬に行うパブリックコメント(意見公募)を経て、10月下旬に成案化する。
懇話会ではこのほか、副会長に市社会福祉協議会の佐藤秀臣氏、市女性会議の佐々木香氏を互選した。(竹田 亘)