小型風力発電の開発・施工・販売を手掛ける「トラストグリーンパワー」(東京)は11月、函館市恵山地区で小型風力発電3基(出力各19・7キロワット)の建設工事に着手する。3基も含め計15基は事業化のめどが立っており、将来的には30基まで増やす考え。永昇建設(函館市鍛治2、岩島一男社長)が協力会社として施工を担う。
市は昨年3月、故障のため稼働を停止していた風車2基(高岱町)の修繕費がかさむため、同地区での風力発電事業を廃止した。
今回の設置予定場所は恵山山麓の南側に位置する恵山町で、海岸線より高台にあるため風況が良い。市が行っていた風力発電の地点が平均風速5・1メートル毎秒なのに対し、今回の場所は同6・6メートル毎秒と約1・3倍の風が吹いており、風向も西側から安定的に吹く。
風車は高さ28・5メートル。3基を先行設置し、来年1月中旬にも稼働予定。このうち1基は既に買い手がついたという。1基当たり4000万円の事業費を見込んでおり、30基建設した場合は12億円。風車1基当たりの予想年間発電量は7万7868キロワットで、30基合計で233万6040キロワット。これは道内の一般家庭の年間平均消費電力(3420キロワット時)で計算すると、約680世帯分に相当。30基で買い取り期間20年間で、計7500万円の償却資産税が市に収められる見通し。地元住民を活用し、草刈りなどの維持管理も予定されている。
国の再生可能エネルギー固定買い取り制度による小型風力発電(20キロワット未満)の買い取り価格が、1キロワット当たり55円と優遇されているのも追い風だ。1基当たり年間約430万円の売電収入を見込む。
日本野鳥の会の助言を受け、バードストライク防止対策として小鳥類の餌場となる立ち木や雑草を除去する作業を行う。親会社のトラストコーポレーション(千葉県船橋市)の堀部敬二プロジェクトマネジャーは「鳥類を含め生態系への負荷を減らす形で事業を進めたい」と話す。
市工業振興課は「再生可能エネルギーを推進する取り組みは喜ばしいが、環境配慮・住民理解の促進を引き続きお願いしたい」としている。(山崎大和)