函館市元町の蒸留酒販売会社「ビハインド・ザ・カスク」(澤田凌代表)は、函館産スルメイカのイカ墨を原材料に使用したドライジン「BLANC DE NOIRS」(ブラン・ド・ノワール)の販売を開始した。同社が道内の蒸留所に製造を委託した商品で、水産加工品製造販売のトナミ食品工業(北斗市追分4、利波英樹社長)のイカ墨を使用し、函館らしさを発信するスモーキーな香りが特徴の商品に仕上がった。
澤田代表(32)はオリジナルウイスキーのボトラーズ(瓶詰め)事業者として、2020年に創業し、今年6月に函館へと拠点を移した。ウイスキー以外にも商品を広げようと、飲食店「ADDICT」(函館市松風町)のマスター、大野直人さん(51)の助言を受けて6月に開発に着手。澤田代表は「函館らしさを表現するものとしてイカ墨を使うことを決めた」と話す。
トナミ食品工業ではイカの加工過程でイカ墨の大半は他の内臓と一緒に飼料用として処理されるが、一部をペースト状にした商品として扱う。スルメイカのイカ墨袋自体が小さく、水揚げが減少する中にあって「函館産イカ墨」をうたうことにも付加価値がある。利波社長(71)は「イカ墨を料理や染色に使う例はあるが、ジンに使うと聞いて驚いた。どんなものができるのか楽しみにしていた」と話す。
澤田代表のオリジナルレシピで蒸留所に製造を委託。イカ墨をベースとなるスピリッツに浸漬してパイナップルなどの他の原材料と合わせて蒸留する。ウイスキー製品同様に自社工房で仏産のワインボトルに瓶詰め。色は無色で、黒ブドウから作られる白ワインになぞらえて名付け、ラベルは白い下地に黒い長方形のラインをデザインした。
製造過程でイカ墨の香りを残すために冷却ろ過をしていないため、水で割ると濁りが生じる。アルコール度数は40度台のジンが主流の中、新商品は50・6度と高めに仕上げた。大野さんは「流行りの飲みやすいジンと違い、面白い味。飲んで味を探るとイカ墨っぽいところが分かる」と話す。基本はストレートで味わうことを勧め、冷やしても常温でも、炭酸などで割っても楽しめるという。
7日夕方に自社ホームページで30本限定で先行販売したところ、数分で売り切れた。澤田代表は「生臭さはなく、スモーキーですずりで墨をすったときのような香り。ウイスキーファンに喜んでもらえるはず」と自信を見せる。
750ミリリットル、6820円(税込み)。500本を製造し、酒販店に順次、出荷する。函館市内では酒ブティック越前屋(万代町)などで取り扱い予定。(今井正一)