1879年創業の函館を代表するレストラン「五島軒」(末広町、若山直社長)はケーキや焼き菓子などの〝五島軒スイーツ〟を新たなパッケージで販売している。創業期のレシピを基にした幻のケーキ「ソーフケーキ」の復刻や、レジャニー、ベルギーチョコレートブラウニーなど9種類を、花束を意味する「Bouquet(ブーケ)」シリーズとして、統一デザインのパッケージで提供。函館の開港文化を感じる商品で、人気が広がっている。
同社は、2015年度にデザイナーと食品加工企業をマッチングさせる函館市の「ビジュアルコミュニケーション導入支援事業」に応募。函館デザイン協議会会長で、ブルーム・エー(上新川町)代表の岡田暁さん(42)との協業をスタートさせた。
新シリーズの目玉商品に据えた「ソーフケーキ」は初代料理長五島英吉が残したレシピが基。小麦粉、砂糖、卵を同割で配合するクラシックなケーキで、販売部の工藤真史次長(42)は「長崎出身の五島英吉がカステラをイメージし、北海道らしいケーキとしてて考案したもの」と話す。かつて併設していたビリヤード場に足を運んだ外国人に手を汚さずに食べられるケーキとして提供していたほか、横浜などでも売られていたという。近年は市販はせず、取引先などへの贈答用に使う特別なケーキとなっていた。
製品化に当たり、パッケージに合わせて、中央部が膨らまない焼き方を工夫した。このほかにも常連客の依頼で誕生した「レジャニー」、洋酒文化が早くから広まった函館ならではのコニャック使用の「ブランデーケーキ」などの既存商品もラインナップに加えた。
箱には、ドレスを着た貴婦人やカメラを構える男性など五島軒が所蔵する函館開港期の錦絵に描かれた外国人を配置。立方体を半分にした形状で統一し、9種類のスイーツごとに色を変え、側面には商品の紹介文を記載した。贈答用に複数個入れられる化粧箱も用意し、商品を選ぶ人、もらう人の双方が楽しめるようにした。岡田さんは「函館の異国情緒と、五島軒が培い、守ってきた洋食文化を外に向かって発信するためのアイテム」と話す。
シリーズは昨年11月3日に登場以来、ソーフケーキが一番人気という。今後、商品の追加も進める考え。若山豪製造販売企画開発室長(33)は「五島軒の歴史をひもとくと函館の歴史とも重なる。今までにない商品に仕上がった」と話し、函館の土産品としても定着させたい考えだ。
商品は本店と各支店で販売。各1個540円(税込み)。(今井正一)