大変な災害が起こった。津波の恐さの記憶がまだ新しいのに、川の氾濫の恐怖が重なった。国土の狭さと厳しい自然環境と、何とか折り合いをつけて暮らしてきた日本の現実を改めて知った思いである。
家族で8年ほど暮らした東広島市の被害も大きく、心は痛いがどうすることもできない。そんな先日、フェイスブックにタオルが不足しているから広島に送ろうという記事が載り、私が見た段階で数千人が賛同してシェアしていた。思わず娘とタオルを送ろうと膝を叩いた時、それに対する注意喚起の記事が目に入った。一カ所にタオルが届くなど大変な迷惑であること、呼び掛けているのが特定の業者であることなど、落ち着いて考えればその通りだった。ネット社会の恐さを痛感した。デマもあろう。こちらの善意を利用したビジネスもあろう。
仕事柄、講演を頼まれることがある。簡単なテキストを配ることがあるが、その再利用を完全に禁止することは難しいだろう。パワーポイントを使うことも多いのだが、その画面を断りなく撮影する人がいる。録画する人もいる。最近もそんな場面に遭遇したので注意させてもらった。苦労して編集した画像が無断で撮影されたり、流布されることなど考えられないのだが、悪意がない人が多いことには毎回仰天する。誰もが発信できて主人公になれるSNSの時代、倫理観の崩壊と常識の変化が恐い。自戒も込めてそう思う。(生活デザイナー)