十数年ぶりに夫婦一緒に暮らすようになり、炊くごはんの量や洗濯機の使用頻度をはじめ、何かと慣れずに苦笑する日が続いた。それもやっと落ち着き、夫と私に新しい楽しみができた。ガーデニングである。長く魚を相手に研究してきた夫はじっくり植物の成長を見る経験がなかったらしく、毎日眺めては、植物はすごいなあと感嘆する。確かに、一雨ごとに緑が増したり、一夜にして虫に食われてしまったりと目は離せない。
昔は農学部で園芸学を学んだのに、長くそんな余裕などなかった私が土いじりを始めたということで、友人から大きな寄せ植えが2鉢届いた。新しい生活への粋なお祝いである。園芸の先生と一緒に苗を選び、丁寧に植え付けてくれたらしい。ブルーベリー、チャイブ、コールラビなど私好みの苗がびっしり植えられている。庭に置くと急に狭い空間が立体的になった。
この素敵なギフトの魅力は収穫物だけではないと私は思った。彼女から贈られた最大のプレゼントは時間ではないだろうか。植物の成長は確かに速いが、開花や収穫にはそれなりの時間が必要である。年をまたぐこともある。思えば、調べものも買い物も、書類のやりとりもネットで瞬時にできてしまう時代、何かをひたすら待つことなどめっきり少なくなった。だがワクワク、ハラハラしながら待つ時間は想像力をかき立て、私たちの感性を多いに刺激する。日々変化する植物たちをしっかり見つめて時間を大切に暮らしたいと思う。(生活デザイナー)