中国は大連に行って来た。食品学系の学生さんたちに日本の食文化について講義するためである。ヨーロッパで同じような講義をした時は、みんな興味深く聴いてくれたが、今回は中国。豊かな食文化をもつ彼らは小さな国日本の食卓に関心はあるのだろうか。
言葉の問題もあり、不安だったが、箸の置き方や日本料理の盛り付けなどにたくさんの質問が飛び交い、日本の大学では考えられないほどの活気のある時間になった。同時に、今後探求したい課題も得ることができた。
わが家に昔からあるカラフルな中国料理用の食器の写真を見せたところ、初めて見たという人が多かったのだ。確かにどこで食事をしても日本の中華料理店やラーメン屋さんで見る四角い渦巻き模様や龍、鳳凰などの柄は見られなかった。
写真は講義のあとの会食風景だが、高級料理店でも気軽な店でも食器のほとんどは白一色だった。西欧化の普及とみるべきか、料理を引き立てるには白い食器が良いからか。いずれであれ期待していた華やかな「中国らしい」器は食器店にも探せなかった。
日本に行けば侍や忍者に会えると思っている人がいるという笑い話もあるが、私の中国らしい食器探しはそれと同じことではないのだろうか。中国らしさとは何か。翻って日本らしさとは何か。その国らしさは異国においてデフォルメされて残っていくものなのかもしれない。調べてみようと思う。
それにしても世界中の食卓が画一化されていく現実は実に寂しい。(生活デザイナー)