「日本再生に向けて、地域が取り組むべき事とは」と銘打たれたセッション。福島県会津若松市ではスマートシティ型のまちづくりに向けた取り組みが進む。総合ITサービス企業「TIS」執行役員の音喜多功氏は、同市に昨年4月に開所したICTオフィス「スマートシティAiCT(アイクト)」を紹介し、人口減少時代における産官学民連携の重要性を強調した。
観光産業が基盤となっている同市は、リーマンショック後の景気悪化と東日本大震災の影響により若者が流出。将来への危機感と、地域復興のスローガンがスマートシティ化への原動力となった。巨大なコミュニティスペースとして全国から注目を集めるAiCTには現在、TIS社を含む民間企業18社が入居するほか、ICT専門大学の草分け・会津大学とも連携し、学生のインターンシップの場としても活用される。音喜多氏は会津大と公立はこだて未来大の親和性を挙げ「函館でもぜひ(AiCTのような場を)つくってみては」とエールを送る。
「情報格差と商品格差を埋める事業を」と力を込めたのはサツドラホールディングス代表取締役社長・富山浩樹氏。同社と江差町今年3月に締結した包括連携協定について、富山氏はスマートフォン向け歩数記録アプリ「サツドラウォーク」をポイントカード「エゾカ」と連携させ、利用者の歩数に合わせ電子マネーを付与する仕組みを例に説明。システムを利用し、健康づくりに挑戦する住民が往来する日常が、地域をつなぎ、未来を灯すことを示唆した。
函館での取り組みにも目を向けてみる。函館商工会議所青年部の斉藤秀司会長は、函館マラソンをフルマラソン化に押し上げた実績を挙げ、大会の運営に多くの企業協力を受けた経験から「地域のために汗をかき、地域のために学ぶ社会人の醸成を」と語る。函館西部地区振興協議会の二本柳慶一会長は「大人たちが『ここで生活をするんだ』という背中を子どもたちに見せることで、夢を持ち、地元に残ってくれる」。函館工業高校建築科で駅前地区の模型製作を指導した際、生徒たちが自ら課題を発見した姿に触れ「大人ももう一度、地域を学ばなければ」と会場に言葉を向けた。
2050年の函館の人口は推計約14万人とも言われる。この数字を重く受け止めつつ、まちづくりの原動力となる「学び」の場を作っていきたい。
(実行委員・中野三博=公務員)
=11月1日に開催した未来の学びフェスin函館でのトークセッションの様子を紹介しています。