函館市船見町の国華山高龍寺(永井正人住職)が収蔵し、クラウドファンディング(CF)の活用で120年ぶりに修復作業していた蠣崎波響書「釈迦涅槃図」(道有形文化財)が約1年3カ月の作業を終え、3月31日に報道関係者に公開された。1~15日に釈迦が亡くなった日の法要「涅槃会」に合わせ一般公開する。
釈迦涅槃図は、同寺第11世の華重禅海住職と松前藩蠣崎家の家老で画人としても活躍した波響(1764~1826年)に親交があり、1811年に住職の求めに対し贈られた。涅槃図としては珍しい双幅の形式で、絵が描かれている部分(本紙)は縦301センチ、横145センチ。
修復・改装は1902年に実施。近年は傷みが目立ち修復を望まれたが、費用を行政からの助成が見込まれずCFとした。2023年10月3日~11月2日に当初目標の1100万円に達し、目標額を伸ばし同23日までに1600万円を達成。費用のめどが立ち、横浜市の清水丸経本店(清水勝清社長)へ送られた。
永井住職によると、修復作業は24年1月から始まり、ぬるま湯でかびやロウなどの汚れを落とした。補色はしなかったが、鮮やかさはよみがえった。「それだけ絵具の状態が良かった。波響だけに良い絵具を使っていたと思われる」と永井住職。
釈迦の死に集まり別れを惜しむ弟子や神々を凝視すると、繊細に描かれながら汚れの影響で素地の質感が低くなっていた部分も日本画の絵具らしい風合いになっている。「現状維持を第一としたため、全体を見ると一見変わっていないようだが、細部を見るとまったく違う」と紹介。
絵の部分を保護する裏打ちを3層にし、表装も絵や大きさにふさわしい西陣織に変え、全体的な大きさは修繕前の縦339センチ、横157センチより大きく縦371センチ、横171センチとなった。展示時の充実や作業で傷まないように、吊り上げ用にウインチも設置した。
ウインチを含め修繕費用は全額CFでまかなわれ、作業を終えた寺宝は3月28日に戻った。永井住職は「CFによる修復という責任を全うし、寺のみならず函館市、北海道の宝を次の世代に残すことができた。ほっとして肩の荷が下りた気持ち」と話した。CFなどの支援は3月26日現在、1750人から約1950万円となっている。
一般公開は本堂で、午前9時~午後4時。入場無料。修復に関する概要のパネル展示も行う。(山崎純一)