昨秋に北海道新幹線で来函した観光客のうち、約4割が新幹線開業を契機に函館来訪を決めたことが、北大大学院工学研究院の岸邦宏准教授が行ったアンケート調査で分かった。市内観光の満足度はおおむね評価が高かったが、公共交通の案内表示やアクセスは、ほかの項目と比べて「やや不満」とした割合が高く、受け入れ態勢の課題が改めて示された。
9日に函館市中央図書館で開かれた「ICAS nimoca(イカすニモカ)」の導入記念フォーラムで岸准教授が報告した。調査は昨年9月23~24日、五稜郭タワーで道内外の観光客1000人を対象に行い、574人から回答を得た。
新幹線未開業の場合、今回陸路で来函した旅行客294人の21%が「訪問を取り止めていた」、17%が「訪問先を変更していた」と回答。「航空機やフェリーなどを利用した」と答えたのが半数だった。
函館までの移動手段は、新幹線が41%、航空機が38%とほぼ同数。調査した約4割の観光客が函館を初めて訪れ、リピーターでは2回目が22%、3回目が15%だった。
また、函館観光に関する評価では、観光地と食事の項目で「満足」「やや満足」の回答者が約9割に上った一方、公共交通の案内表示や観光地からバス停・電停へのアクセスでは6割以下にとどまり、「やや不満」とする人の割合が1割を超えた。
交通・環境計画が専門の名古屋大学大学院の加藤博和准教授は、フォーラムで函館駅前にあるバスの行き先案内を工夫する必要があると指摘。「案内表示と乗り場の色が統一されていないなど改善すべき点がある。駅に降りて最初に見る案内看板は、バスでいろいろな場所に行ってみたいと思わせるような〝魅せる化〟が重要だ」と述べた。
岸准教授は、約8割の観光客が「函館を再訪したい」と回答したことを挙げ、「新幹線の開業効果が持続する可能性は十分にある」と強調。一方で、詳細な分析結果から、特に函館市外を訪れる旅行者は交通案内やアクセスの充実度を重視しているといい、「道南地域全体に開業効果を広げるには、ネットワークとしての公共交通が必要だ」と話している。(山田大輔)