道南スルメイカ漁は今季、近年まれにみる不漁に直面し価格が高騰している。函館市水産物地方卸売市場での生鮮スルメイカ取扱量(6月1日~10月20日)は前年比33%減の1043トンとなり、過去10年で最低。一方、1キロ平均単価は249円高い659円で過去10年で最高。不漁による原料不足が顕著で、地元の加工業者は原料手当てもままならず、危機的状況に陥っている。
市農林水産部によると、6~9月の市場取扱量は前年比36%減の910トンで、過去10年で最も少なかった。漁期後半(南下群の漁獲)の10月に入っても、不漁だった前年を2%上回る133トン(20日現在)と低迷。月別単価を見ると、6月が507円、7月が550円、8月が843円、9月が667円、10月(20日現在)が841円と、いずれも500円を超え「ありえない水準」(同部)という。
市場では、加工業者が買う木箱(1箱18キロ入り)が1万円を超えるケースが相次ぎ、普段は買わない発泡下氷(同6キロ)にも手を伸ばし始めているという。同部は「全国的に量が少ないので、原料イカの奪い合いになっている。加工業者が一番割を食っている」と説明する。
こうした状況を受け、函館特産食品工業協同組合(古伏脇隆二理事長、組合員56社)は9月末、組合員企業に対し「加工イカ原料漁獲状況の周知とイカ珍味製品の価格改定へのお願い」との文書を出し、組合員を通じ取引先へ配布。同組合は「国産が不漁の年は海外からの輸入品で対応できたが、今年は海外産も含め全滅状態。輸入枠の増枠や業態転換への支援も要請したい」とする。
小売りの現場にも変化が起きている。函館市中島廉売内の紺地鮮魚(紺地慶一社長)では、店頭販売するイカ塩辛を今月15日から値上げした。メーカーに製造委託した約15種類を扱っており「仕入れ値が上がったので、店頭価格も上げざるを得なかった」と紺地社長。生鮮スルメイカは時価のため価格の変動はあるが「塩辛は今季の原料高騰で、やむを得ず転嫁した」と理解を求める。塩辛のほか、メーカーによってはイカ珍味でも内容量を減らすなどの動きがある。
不漁の要因について、道総研函館水試の澤村正幸研究主査は「道南でも道東でもオホーツク海でもない海域にイカの群れがいる可能性がある。また、資源量が減っている可能性もあり、津軽海峡にイカが戻ってきても、漁獲の上向き方は鈍いだろう」と指摘している。(山崎大和)