昨年9月の胆振東部地震で発生した大規模停電を受け、函館市内のガソリンスタンドで非常用発電設備を設置する動きが加速している。函館地方石油業協同組合によると、函館市内にある加盟店50店のうち24店が今年度中に設置する。同組合の非加盟店を含めると市内約70店のうち、40店以上で停電時の給油対応ができる見通しだ。
同組合と非加盟の7社によると、昨年の地震発生時に非常用発電機を導入していたのは10店のみだった。はこせきは地震発生時、非常用発電設備がない店舗でも手動の給油で対応したが、名久井公平SS統括副部長は「少しでも貢献できるように店を開けたが、手回し給油は社員の労力がかかった」と振り返る。
道南大手の前側石油は函館市内の全9店中2店のみ営業できたが、中には1・5キロ以上の車列ができた店舗も。堀茂幸営業部SS統括第1グループ長は「非常用なので給油機は1基だけしか使えなかった。地震後に全店での設置を決めた。従来よりも発電量の大きい機械を今年度中に導入し、レジと給油機に対応したい」と話している。
導入が進む背景には、補助制度の充実がある。経済産業省は熊本地震後に災害時の燃料供給拠点を整備する一環で、1カ所あたり最大250万円の支援を始めた。胆振東部地震後には、道が同様の上限額で全道200カ所への臨時補助制度を実施した。
今年は函館市内で経産省の補助採択が集中し、同組合加盟の24店が設置する予定。道経済部によると、道の採択を受けた給油所は市内で10店に上る。
「クローバー」ブランドの独立系GSを全国展開するアサヒ商会も補助制度を活用し、市内6店を含む道内全店に非常用発電を導入した。齊藤巌社長は「東日本大震災や熊本地震の経験から、昨年の地震発生時は東京に対策本部を置いた。被災者でもある現地のスタッフの代わりに、他地区から応援を呼ぶなど対策を進めている」と話している。
停電時の供給が可能になっても、道路網の寸断などによって物流が機能せず、ガソリンが不足する恐れは残る。同組合の伊藤清隆事務局長は「日常から車の燃料メーターが半分程度になったら満タンに、暖房用の灯油は1缶余分に購入して非常時に備えてほしい」と呼び掛けている。(深津慶太)