国の文化審議会(佐藤信会長)は19日、国内最古で稼働する観覧車として知られる函館公園内「こどものくに」(青柳町17)の「空中観覧車」を登録有形文化財とするよう、柴山昌彦文部科学相に答申した。官報告示をもって正式決定する。
観覧車は1950(昭和25)年に七飯村(当時)の大沼湖畔東大島に設置され、65年に現在地に移設。観覧車研究家の福井優子さん=大阪府=が関係者や当時の新聞報道などを基に調査し、稼働する現役の観覧車として2006年に国内最古であることを示した。
八角形のホイールに、日本では珍しい2人乗りの長椅子型ゴンドラが8台付いている。設計図がなかったことから、同園を運営する「北海興業」(加藤健一社長)が昨年実測したところ、高さと直径がこれまでの公表より2メートル小さく、高さ10メートル、直径8メートルだったことが判明した。
登録有形文化財の登録には、原則として建設後50年が経過し、①国土の歴史的景観に寄与している②造形の規範となっている③再現することが容易でない―ことが基準となる。市内の登録物件は19件で、今回の答申を加えて20件となった。
今年は骨組みは生かしつつ、ゴンドラを取り外してさびを落としたり、設置当初の色を取り戻そうと古い写真を頼りにペンキの塗り直しなどを施した。同社の加藤大地マネジャー(20)は「受け継がれてきた歴史が認められたようでうれしい。メンテナンスに気を配り、たくさんの人の心に残るように努力していきたい」と話した。(小杉貴洋)
70年近くにわたって愛されてきた「函館公園こどものくに空中観覧車」が、国の登録有形文化財に登録される見通しとなり、関係者や利用者から喜びの声が聞かれた。
「観覧車通信」日本支局長の肩書きを持ち、著書も多い観覧車研究家の福井優子さんは「とても感慨深い。経緯を考えれば登録は遅かったくらい」と声を弾ませる。日本最古であることの決め手の一つとなった完成当時の新聞記事で「楽しい空中観覧車-きょうから大沼公園で公開」の見出しを発見した際は歓喜にあふれたという。「昭和20年代のものは唯一。函館のシンボルとして長く歩んでいくことを願っている」とした。
函館市山の手の主婦、小池久枝さん(58)は娘の竹田恵子さん(33)、孫の光里ちゃん(1)と親子3代の利用者。「道南の人なら1度は乗っているはず。思い出もたくさん。孫の次の世代にも残してほしい」と語った。(小杉貴洋)