北海道新幹線の開業を前に、福音館書店(東京)が絵本「青函連絡船ものがたり」を23年ぶりに復刊した。廃止直前の連絡船の姿や函館のまちを、旅情あふれる文章と絵で伝えている。復刊のきっかけとなった函館の読み聞かせグループは「児童書と思わず、連絡船に関わった全ての人に読んでほしい」とPRする。
青函連絡船ものがたりは、連絡船が廃止される2カ月前の1988年1月、月刊誌「たくさんのふしぎ」として刊行。92年には同誌の中から選んだ傑作集に収められた。翌年に重版されたものの、その後は品切れになっていた。
絵本は連絡船に乗る人たちや船内部の様子、構造や歩みなどを詳しく紹介。洞爺丸事故が契機となり、青函トンネルの計画が進んだことにも触れ、青函を結ぶ交通の変遷が読み取れる。文章は鉄道紀行作家の故宮脇俊三さんが、絵は鉄道イラストレーターの故黒岩保美さんが手掛けた。
復刊のきっかけは、函館の読み聞かせグループ「函館絵本の会 銀のふね」。昨年7月、福音館書店販売部の中村健太朗さんが函館を訪れた際、メンバーから「いい絵本なのに、今は手に入らない」と訴えられた。改めて本を読んだ中村さんは「絵が緻密な分、当時の思い出を引き出す力がある。開業前の今だからこそ、復刊する意味がある」と決断。4000部の限定復刊を実現させた。
同グループは「連絡船に乗るのは、たいていが人生の岐路。だからみんな何かしらの物語がある。本を機に、連絡船を知らない子どもたちとの会話が弾めばうれしい」と呼び掛ける。
B5変形判40ページ。1300円(税別)。函館市内の書店で取り扱う。石川町の函館蔦屋書店1階暖炉スペースでは、4月8日まで本を紹介するパネル展を実施している。(稲船優香)