函館市電で、1975年に最初の広告電車として運行した724号車が、3月下旬でラストランを迎える。保守用の部品を残して廃車となる予定だが、函館市企業局交通部は、お別れセレモニーの実施を検討している。
724号車は、現在8両ある「710形」の1両。
車体は全長12・24メートル、幅2・34メートル、高さ3・7メートル。旧新潟鉄工所で製造され、62年に納車。同部は現在、収入や営業距離に見合った台数として30両の車両を保有しているが、超低床電車「らっくる号」の新車導入に伴い、引退が決まった。
企業広告をあしらった初のカラー電車のスポンサーは、大門地区で98年に閉店したさいかデパート。店のイメージカラーに合わせて車両を真っ赤に塗装し、「さいか号」として運転した。
当時は広告に関してさまざまな規制があり、看板職人が車体に記した「さいか」の文字は控えめ。同部施設課によると、広告電車は函館に先駆け、長崎市内で路面電車路線を営業する長崎電気軌道が運行していたといい、「函館に登場した時はかなりインパクトがあった」と説明する。
現在は、イチヤママル長谷川水産(八雲町)のラッピング車両として親しまれ、724号車の引退後は、別の車両が同社の広告電車となる。
車両は整備を重ねることで現役で活躍できるが、納入から半世紀以上が経ち、メーカーからの部品供給は終了しているという。このため、引退後は速度制御装置などを取り外し、他の710形の予備として保存する。
同部は、最終運行の日程を調整中で「可能であればセレモニーを実施したい」としている。(山田大輔)