公立はこだて未来大学は30日、人工知能(AI)の研究開発を進める「未来AI研究センター」を早ければ3月にも開設すると発表した。AI研究の第一人者で、複雑系知能学科の松原仁教授がセンター長に就き、道内外の企業や行政機関と連携し、産官学で地域に密着した課題解決に挑む。AIの研究拠点は道内初で、活発な研究の推進、普及が期待される。
近年AIが脚光を浴びる中で、1年ほど前から同大との共同研究を希望する企業が増えたという。日頃単体で研究している教員からも「(研究を)まとめる組織があれば」との声が上がっていたため、設立に踏み切る。
教員は機械学習やロボティクス、知覚系など10人以上が参加する見込み。センターがポスドク(任期付きの研究員)を1~2人公募する。連携する企業は日頃から同大と関わりのある10社以上を予定し「首都圏のAIベンチャーや電機メーカーなどと交渉中だが、今後道内、できれば道南の企業を掘り起こしていきたい」(松原教授)。
同大では漁業のIT化を進める「マリンIT」に長く取り組んでいるが、農業や観光、交通、食品、医療、教育、スポーツなど幅広い分野の研究開発に乗り出す。また、AI技術に関する知識を持った人材の育成にも寄与するため、月に1回のペースで地域関係者向けのセミナーを実施する。
今後、研究補助員や連携研究員が確保でき次第、学内に専用の部屋を設ける予定。ただ、センターは10年間を設置のめどとする。
松原教授は「教員が地域住民と直接話し、課題を聞けるのが未来大の強み。地域のニーズと研究をマッチングさせたい」と意気込み、顧問に就く片桐恭弘学長は「各教員や企業が持つデータを共有することで、研究の相乗効果が生まれるかもしれない。交流のための情報ハブ的な役割も期待している」としている。(稲船優香)