函館市が今年度民間へ売却予定の旧ロシア領事館(船見町)に関し、市民団体から市文化財指定を求める要望書が提出されたことを受け、市文化財保護審議会(上平幸好会長)は19日、市役所で今年度の初会合を開いて対応を協議した。文化財指定を巡る旧領事館の議論は2008年度以降中断していたが、価値を再考し、今後も意見交換していくことで一致した。(山田大輔)
旧領事館は、市教委が1979年に市指定文化財の候補物件として同審議会に提案。その後、調査などを行ってきたが、市として利活用の方向性が定まっていないとして、2008年度に審議から外された。
会合では、複数の委員が「文化財保存と利活用は分けて考えるべきだ」と主張。旧領事館と同じくドイツ人建築家のゼールらが設計し、同時期の明治時代に建築された多くの建物が、重要文化財の指定を受けている事例なども報告された。上平会長は「議論の凍結を解除し、審議会で鋭意検討すべき。スピード感を持って問題に取り組みたい」と述べ、市教委文化財課は「年内に意見交換の場を設定する」と応じた。
旧領事館は、外観保全が条件となる景観形成指定建築物となっているが、函館の歴史的風土を守る会(歴風会)などは内部にも歴史、建築学的に重要な箇所があり、保全が必要だとして市指定文化財への指定を要望。市文化財指定について同審議会で審議し、市教委に建議することなどを求めていた。
一方、市は文化財指定には時間がかかるほか、利活用が制限がされるなどとして、景観形成指定建築物としての保存、活用を計画し、事業者の募集要項を公開している。