函館港内を運航するマルカツ興産(柳沢政人社長)の遊覧船「ブルームーン」がリニューアルし26日から営業を開始した。運航再開前の25日には試乗会が行われ、船体のデザインとして施された絵画を描いた障害がある人とその家族や施設関係者約130人が乗船。自分の作品を見ながら、満足そうに約30分間の〝船旅〟を楽しんだ。
昨年まで使用していた船のエンジンが故障したため、能登半島地震で使われなくなった石川県七尾市の船を購入。新たなブルームーンとした。
グループの魚長食品の佐々聖財務部長が、船体に障害者のアートをデザインすることを発案。障害者アートに深く関わる市内の映像制作会社「ビデオ・ザ・キッド」の藤田道子社長が協力したほか、デザインやレイアウトはファッションブランドtenbo(千葉県)代表の鶴田能史が手掛けた。
船体にデザインされた作品は小学生から50代の16人の計51点。動物や植物、人、車、風景などモチーフは多彩でカラフルなものばかり。佐々部長は「イメージ通りの出来栄え。函館港の新たな観光のシンボルになる」と手応えを口にした。
アーティストらも大喜びで船に乗り込んだ。函館恵愛会の事業所クリン(本町)で働く相場大河さん(30)は作品6点が採用された。「たくさん絵を使ってもらいとてもうれしい。多くの人に見てもらいたい。船に自分の絵があるのは不思議な気分」と笑顔。
多機能型事業所ワークセンター一条(旭岡町)に通う北村元希さん(22)はクマとトラの絵が選ばれた。家ではもちろん、作業所でも作業の合間に絵を描いている。何日も前から乗船を心待ちにしていたといい、「船に乗ることができて楽しい」と満足げだった。(松宮一郎)