高齢者における白内障手術の意義
年を取ると筋力や瞬発力が衰え、見えづらいことから小さな段差があることにも気付かずにつまづき、転倒や骨折の危険性が高まるほか、見えないことで認知症が進むとも言われております。高齢になり、物がかすむ、見えづらい、まぶしく見える、視力が低下したなどの症状がある場合、これらの症状が白内障によって起こっている可能性があります。80歳以上ではほぼ100%の人に白内障はあると言われていますが、白内障に対する手術によって見えづらさを改善することができます。しかし、見え方や感じ方は人それぞれ違うため、見えづらいという自覚症状は年齢で区切ることはできません。それだけではなく、人によって白内障の進行度が違えば生活のスタイルも違うため、比較的若くして白内障手術を受けられる方もいれば、死ぬまで手術を受けない方もいます。仮に、見えづらさを改善するために白内障手術を受けることになっても、全ての人に同じような結果を期待するのは難しいものです。
白内障手術を受ける際の説明で「白内障手術後にどういった見え方を希望されますか?裸眼で遠くが見えるといいですか?それとも近くが見えるといいですか?眼鏡はどうしますか?」というようなことをよく聞かれます。術後の見え方は患者本人の理想や希望が1番ですが、術前の眼の状態や生活スタイルからおすすめの見え方や眼鏡の使い方を医師から提案されることがあります。また、いくら手術がうまくいっても、術後のピントは求めているところから多少はずれるものです。可能な限り患者の理想に近づける努力はしていますが、医療には限界があります。高齢になり身体が衰えてきた中で「今より見やすくなりたい」と考えることがあれば、見えづらさを改善する一つの方法として白内障手術があるということを念頭に置いて、自分の生活スタイルに合わせた見え方を考える必要があります。
白内障手術が気になる方は、一度、眼科医にご相談ください。
(ハコラク 2025年12月号掲載)
略歴
平成15年、山形大学医学部卒業。同年同大医学部眼科学教室へ入局。山形県立中央病院、公立置賜総合病院、函館市内の眼科などの勤務を経て、令和元年10月、はこだて港町眼科を開院。日本眼科学会眼科専門医。



