道銀地域総合研究所(札幌)は、北海道新幹線開業後の1年間で、道南圏の宿泊客数増加による道内の経済波及効果が200億円近くに上ったとする試算結果をまとめた。渡島・桧山地方の経済効果は約169億円で、同研究所は「新幹線効果を全道に広げるには、二次交通の整備と広域周遊観光ルートの開拓が必要だ」と指摘している。
昨年4月~今年1月の来道者実績を基に道南圏の宿泊客数が39万人増加したと想定し、経済効果を試算。新幹線を利用して道南以外に直行した旅行客による波及効果は含まれていない。
宿泊者増によるホテル代などの「直接効果」は116億円。土産品や飲食の需要に対応する原材料の生産増大などで得られる「1次波及効果」は全道で47億円、道南では30億円。雇用者所得向上による「2次波及効果」は道南23億円を含め、合計で35億円と見積もった。
新幹線開業で雇用者を誘発した数は全体で約1700人と推計。経済効果を道南で業種別にみると、サービス業が91億円と最大で、商業が20億円、金融・保険・不動産が11億円で続いた。
一方、北海道銀行が2月に道内の観光関連事業者238社から回答を得たヒアリング調査では、地域全体への開業効果について道南の全企業が「プラス」と答えたのに対し、十勝とオホーツク管内の企業は「マイナス」が「プラス」を上回った。これらの企業からは、自社のビジネスへ反映させるための必要策として「函館空港と道内各地を結ぶ航空路線の拡充」を求める声が多く寄せられたという。
同研究所は、新幹線の利用者増加に向けて「東北・首都圏を中心に効率的で積極的なPRや修学旅行の誘致促進が必要だ」と指摘。道南地域以外への波及を促す策として「都市間バスやチャーター便など二次交通網の整備が急務で、2030年度に予定されている札幌延伸の前倒しにも期待が懸かる」としている。(山田大輔)