北海道菓子工業組合函館支部(会長・若杉充宏はこだて柳屋社長)は今月、支部創立60年の節目に記念誌「北海道の菓子文化の歴史-その源流を道南に探る」を刊行した。著者は道教育大名誉教授の佐々木馨さん。函館や松前、江差の菓子文化を歴史的背景からひも解いている。
1885(明治18)年に函館菓子商組合が設立され、140年の歴史を誇る。1964年、発展的に道菓子工業組合函館支部に移管され、昨年に支部創立60年を迎えた。
佐々木さん(79)は仏教史が専攻。昨年4月に若杉社長(64)と五島軒の若山直会長から執筆の依頼を受けた。さまざまな編さんをしていたが菓子に関しては初めてで、「菓子は生誕から死去まで人生において供物などとして存在するほか、年中行事でもその中にある。室町時代から近世まで、菓子文化と仏教寺院の関わりは深く、執筆のアプローチとした」と話す。
道南史の年表に続き、和人の道南開拓と開教、仏教における菓子の意義といった菓子文化誕生の歴史的背景を説明。近世の菓子文化では、城下町の松前、開港地の箱館、北前船で栄えた江差に分けて展開。生活文化や異人へのもてなし、茶菓子の在り方などや、各地域の七夕やクリスマスなどの年中行事、人生儀礼と菓子の関わりを解説している。
このほか北海道製菓界の組織と歩み、函館の老舗創業や、道内の消費者(需要)、製造者(供給)の関係を図や表も交えて分かりやすく伝えている。
若杉社長は「時代背景と菓子文化のつながりを解明し、目からウロコの一冊となった。道内の菓子商、菓子工業界の発展につながることができれば。情報提供を頂いた皆さまと佐々木さんのおかげ」と感謝。佐々木さんは「自分も菓子や食を深く知ることができた。菓子の存在は日常的で、神仏と関わりを理解するのに参考にしてもらえれば」と話した。
A4判、137ページ。300部を発行し、菓子業関係者や函館市、松前町、江差町、道教育大に配布した。一般の閲覧は函館市中央図書館で可能。(山崎純一)