オリンピックにはたくさんのドラマがあった。金メダルを手にしてすぐに引退を宣言した選手もいたし、パリ大会でのリベンジを涙で誓った人もいた。完走しただけで感動を与えた選手もいたし、金メダル以外はうれしくなさそうな人など、アスリートの表情はさまざまだった。みんな違って当然である。だが私たちはとかく「あるべき」イメージを期待してしまう。
近年、同世代は終活の大合唱。年賀状はやめよう、お墓も片付けようなど、身軽になる方向を一斉に向き始めた。だがそんな周囲に反して、この夏、わが家に子犬がやってきた。今年の3月、高齢の愛犬を亡くしたばかりなので、時期尚早の感はあったが、出会いがあって家族に迎えた。60代も後半になると保護犬を引き取ることができない。さりとて、保護施設以外から子犬を迎えるには相当な覚悟が必要である。この先十数年責任を持てるかという不安は当然である。
しかし、娘たちの応援もあって私たちは熟慮の末、決心した。足腰痛いなど、もう言ってはいられない。そうして始まった子犬育ての日々はにぎやかなことこの上ない。97歳の母もなんだか楽しそうだ。「もうできない」ことは加齢とともにどんどん増える。だが「まだできる」こともたくさんある。人生のリニューアルは何度でもできると私は思う。大型犬の子犬は2カ月半で7キロを超えた。北国の空はすでに秋。日々成長するムクムクの相棒といっしょに、老体にむち打ってこれからのよい季節を満喫しようと思う。(生活デザイナー)