函館にはおいしいお餅屋さんがたくさんある。以前、べこもちの研究をしていた時は、函館市内だけでなく、道南全域に足を伸ばして餅菓子を探して歩いた。調査といえば聞こえはよいが、食べ歩いたというのが本当のところである。べこもちを扱っている店は大福もおいしい。つい買いすぎて、いや食べすぎて、胸焼けが続いた日々が懐かしい。季節感のある繊細で美しい和菓子とは一線を画す庶民派の代表が大福だろう。作家の尾崎紅葉、二葉亭四迷、武者小路実篤も大福が大好物だったという。なんだかうれしい。
最近はいちご大福が人気である。その起源は昭和60年説をはじめ、いろいろあるが、それほど古いものではなさそうだ。ともあれ、最初に考えた人は偉い。梅や金柑の甘煮なら思いつくこともありそうだが、生のいちごをまるごと餡(あん)で包むという発想は斬新だった。あっという間に全国に広がった伝搬力にも驚く。人気も衰え知らずである。
文化は刻々と変化する。食だけでなく、キモノも住まい方も、伝統的な手法と形にこだわるだけでなく、新しい感性とニーズを取り入れる柔軟性があれば、次世代は必ず評価し、形を変えながら伝えてくれるのだろう。さてフルーツ系の大福の今後が気になる。キウイ大福はおいしかったが、この先、なにが包まれるだろうか。アンパンがそうであったように、和洋折衷、古今を融合させながら、きっとまた新しい味が生まれるのだろう。楽しみである。(生活デザイナー)