和食の定義は難しい。茶湯も豆腐もその起源は中国だと聞けば、日本のオリジナルなどどこにもないように思えてくる。だが、みそ汁は立派な日本生まれではないだろうか。昆布やカツオを使った出汁(だし)文化は日本特有のものだし、みそを作る麹菌は日本の国菌と呼ばれている。
我が家では96歳の母の三食にみそ汁は欠かせない。特にジャガイモのみそ汁が好きなので、季節の野菜や油揚げ、時に豚肉やワカメなども加え、それだけで栄養が取れる具だくさんなみそ汁が多い。だがジャガイモは切り方や煮る時間で形が崩れるので油断ができない。昔は男爵とメークインを料理に合わせて使い分けていたが、昨今は写真のように驚くほどたくさんの種類があり、どれもが個性的だ。サツマイモのような色や食感のものもあり、料理が楽しい。
さてジャガイモ料理といえばなにを思うだろうか。カレーにもシチューにも欠かせないし、ポテトサラダはジャガイモが主役である。もうひとつの主役といえば「肉じゃが」ではないだろうか。東郷平八郎が海軍に命じて造らせたビーフシチューが起源だという説もあるが真偽は分からない。だがその名称が広まったのも、「おふくろの味」として評されるようになったのも昭和40年代からだという。
お惣菜としての歴史は意外にも新しい。各家庭に材料や切り方、味付けに工夫があるのだろう。大きな器にたっぷり盛った「肉じゃが」はみそ汁と並ぶ和食の代表的な料理に違いない。(生活デザイナー)