年々簡素化しているわが家のひな飾りだが、今年は義母が残した立ちひなの隣に御所人形も飾った。長く忘れていたが、先日納戸で見つけた。両親がそろっていた頃はもちろん、母が一人になってからもしばらくの間、この御所人形はひな壇の一番下でひときわ存在感を放っていた。
子供の頃はこの顔が怖くて、なかなか直視できなかったので、おそるおそる箱を開けた。だが、出てきた人形の顔は実に穏やかで美しかった。私も年をとり、やっとその良さが分かったのかもしれない。この御所人形は私の初節句に、名付け親のご夫妻からいただいたという。両親の仲人でもあった。昨今の結婚式には仲人はほとんど見られないし、子供の命名を名付け親に頼むことも稀有だろう。古き良き時代の話である。
その私の名前、三津子の音は両親から一音ずつとったとのことだが、三の字を使った理由には少しがっかりした。父が函館で働きはじめて三年目に生まれたからだというのだが、父の上司にとっては意味があったのかもしれない。津は、かつて巴の港と親しまれた函館港にちなんだという。明るく活気があって人々が集う港のようにという願いを込めた名前だと父は言っていた。函館港とその周辺はそれほど賑やかだったのだろう。
時は流れ、人も街も変わった。さて私はその名前にふさわしい生き方をしているだろうか。御所人形を見ながらしばし考えこんでしまった。(生活デザイナー)