大学の前期15回の講義が終わった。40年も教師をしているので今さら教えるのが大変だなどとは言わないが、文系と理系の学生が交じるクラスで生命科学を教えるのは実際のところ簡単ではない。
中学以来、理科や生物は詳しく学んでいないという学生も少なくない。理系の学生には簡単すぎないか、文系の学生には難しすぎないかと毎回迷いながら資料を用意する。教師としては当然のことだが、毎年15回の講義を終えると安堵(あんど)感で力が抜ける。あとは学生たちが試験で学習の成果を見せてくれるのを待つばかりである。
講義がスタートした4月はまだ雪が残っていたが、15回を終えた日の空はすでに秋の気配。さすが北国である。大学からの帰り道、この仕事をいつ辞めるべきなのかと初めて考えた。非常勤なので定年はない。依頼がある限り、体力が続く限りやるべきか。学生にとってよい教師であり続けられるか。
駅を降りると大学帰りの次女に会った。互いに疲労困憊(こんぱい)で空腹。熱々で激辛のスンドゥブを食べようということになった。入った店で手渡されたのが紙のエプロン。それには写真のイラストとメッセージがあった。この店では若いスタッフたちが書くのだろう。いつもなら見過ごすだろうが、この日の私にはなんとも嬉しいメッセージに見えた。
私の講義もまだ役立っているかもしれない。先生頑張れと思ってくれている学生もいるかもしれない。もう少し続けてみようかとビールを飲みながら私は思った。(生活デザイナー)