神戸暮らしも4年目の次女の案内で、お正月は長女と3人でディープな神戸散策を楽しんだ。初詣の屋台でたこ焼きやたまご煎餅などソウルフードを満喫したあとは、雑貨店やブティックが並ぶ界隈(かいわい)を歩いたのだが、何より興奮したのは「行列ができる」店巡りだった。
写真は北野坂のスターバックスである。1907年の建物だが、持ち主が変ったり震災を経た後、大人気店に生まれ変わった。立ったまま、あるいは素敵な建物の中を歩きながらコーヒーとおしゃべりを楽しむお客さまを、店内各所にいるスタッフが笑顔で見守っていた。
クレープ屋さんとコーヒー屋さんは受け渡しの窓口があるだけ。注文に並び、受け取るためにまた並ぶ。待つお客たち同士に奇妙な連帯感が生まれ、皆周囲の迷惑にならないように気遣う様子が感動的だった。焼きそば屋さんの長蛇の列には仰天したが、優秀なスタッフが小気味よくお客さまの流れをコントロールしていた。
「おばちゃん」2人できりもりしているギョーザ屋さんは6~7人のカウンターだけ。一人が焼き、もう一人がカウンターの中から接客するのだが、持ち帰り用のパック詰めも地方発送の荷造りも同時にこなす様子にはただただ敬服した。並ぶ店には共通点がある。
もっと美味しい店はあるかもしれない。だが結局は人である。作り手と売り手の一生懸命さと人柄に尽きよう。「けんかせんとなかよく食べなあかんで!」とおばちゃんたちにからかわれながら、慌てて食べた餃子は本当においしかった。(生活デザイナー)