函館、近郊の観光名所をめぐる旅行客の足として、観光路線バスや貸し切りタクシーの利用が好調だ。北海道新幹線開業を追い風に、2016年度上半期の需要は、バスの一部路線で前年同期と比べて2倍を超えるなど大幅に増加。観光のピークは過ぎたものの、事業者は早くも来年を見据えてさらなる利用客の獲得を狙っている。
市内で3つの観光路線を運行する函館バスは、JR函館駅を発着する「五稜郭タワー・トラピスチヌシャトルバス」が前年同期比2・6倍と大幅に増加。バス事業部の金岩祐也次長は「新幹線開業に合わせて3便増便して9往復とし、終点をトラピスチヌ修道院から函館空港に延伸したことが奏功した」と分析する。
西部地区を循環する「元町・ベイエリア周遊号」は同73%増、「函館山登山バス」は同61%増。湯の川温泉を起点に道南西部をめぐる定期観光バス「江差・松前周遊号」も同45%増と好調だった。同社は、本年度中に新たなラッピング車両を観光路線に2台投入する予定で、利用客の利便性向上を図る考えだ。
函館、近郊で全12コースの定期観光バスを運行する北都交通は、上半期の利用客が前年同期と比べて1・3倍に増加。中でも午後に市内の観光スポットをめぐる「函館イチオシ半日コース」は、週末を中心に増便することが多かったといい、函館支店の田島典子業務運行課長は「東北を中心に50、60代の利用客が多かった」と話す。
ただ、大沼方面へ向かう路線が伸び悩んだことから、同社は今月下旬から利用状況を分析し、来年度のコース作りに着手する考えだ。
一方、函館・近郊のタクシー業界も開業効果の恩恵を受け、8月の全体の利用件数は前年同期と比べて1割増加した。特に観光用の貸し切り車両の需要が好調で、函館タクシーの担当者は「夏場は4台のジャンボタクシーがフル稼働の状態。大沼まで貸し切りで利用する旅行客もいた」とする。
別の市内のタクシー関係者は「ピーク時は需要に追い付かず、予約を断る日もあった。今年の反省を生かして来年は受け入れ態勢を整えたい」と話している。(山田大輔)