北大大学院水産科学研究院の浦和寛助教とウニ用の人工餌料開発を進める「北清」(札幌市)は、木古内町釜谷漁港で昨年12月から今年3月まで実施したウニ養殖実証試験の結果をまとめた。商品価値のない実入りの薄いウニに開発餌料を与え続けた結果、生殖巣(可食部)は出荷できる大きさとなった。食味に課題があるものの、餌料の改良を続け、より高品質のウニの生産を目指す。
水産物の廃棄物処理などを手掛ける「北清」は2014年に函館市産業支援センターに入居。浦助教の研究成果や隣接する道立工業技術センター、道南の漁業者の協力を得て、餌料の開発と試験を展開。昨年度は上磯郡漁協の協力で釜谷漁港で実証試験を行った。27日に木古内町役場で関係者向けの報告会を開いた。
痩せウニは、わずかな海藻の芽も食べ尽くし、沿岸で海藻群落(藻場)が失われる「磯焼け」の要因の一つとされる。痩せウニの養殖技術確立は、磯焼け対策や漁業者の収入対策などへの期待がある。
試験では専用のかごにウニ100匹を入れ、週に2回餌を与え、ウニの重さに対する可食部の割合「生殖巣体指数」(歩留まり)の変化を調査。商品として流通する指数は12~13%で、試験前は10%に満たなかったものが、試験後には、15~16%となった。浦助教は「色は鮮やかとまではいかないが、ウニ特有の色と大きさになった」と話した。
苦みの要因になる生殖巣の成熟の進行はほぼなかったが、天然物との比較で味が薄いという評価があり、餌料改良の課題とした。脂肪酸の組成割合を調べたところ、DHA(ドコサヘキサエン酸)などで天然ウニを上回る傾向がつかめた。
同社の今村聖祐取締役市場開拓企画部長は今後の事業展開の課題として、餌料の低コスト化や原材料となる養殖コンブの仮根の確保などを挙げ、実用化には漁業者の協力が不可欠だとした。本年度も引き続き餌料改良を続ける方針で、開発餌料での陸上養殖にも関心を寄せられているという。
実証試験に協力した町内の漁業者内山康宏さんは「思ったよりも実が入って面白いと思う」と話す。上磯郡漁協の三上珠樹専務理事は「採算性などいろいろな課題はあるが、実用化されれば冬期間の収入対策にもなる。取り組みに将来性は感じている」と話した。(今井正一)