2022年度の完成を目指し、函館市が函館港若松埠頭(ふとう)に整備を進めているクルーズ船用旅客ターミナルを含めた周辺地域について、NPO法人「語りつぐ青函連絡船の会(湯川れい子理事長)」は、「市民や観光客も集うことができる憩いの空間にすべき」とした活用案を盛り込んだ提案書を、10月上旬にも市に提出する。
同ターミナルは鉄骨平屋で、延べ床面積約1200平方メートル。外国船を受け入れる際のCIQ(税関、出入国管理、検疫)の手続きに対応するほか、観光案内場所としての役割も果たす。ターミナル周辺にはバス19台分、関係者車両46台分の駐車場と、15台分のタクシープールを新設。市内観光地へのスムーズな移動も期待できる。
ただ、市はターミナルや駐車場を含めた関連施設の利用を年間60日程度と見込まれるクルーズ船入港時に限定する方針。これに対し、同埠頭に係留されている「函館市青函連絡船記念館摩周丸(村瀬克史館長)」を運営する語りつぐ青函連絡船の会は「函館の観光エリアの中心に近いこの場所が、年間300日程度も市民や観光客が利用できないことは非常にもったいない」として、独自の活用方法を検討してきた。
同会が特に懸念するのは、クルーズ船の乗客が埠頭岸壁から旅客ターミナルへと移動するための連絡通路の新設。CIQ手続きのため他者との接触を制限する必要があり、市民や観光客は通行ができなくなる。これにより、これまでJR函館駅から摩周丸まで最短で移動できた動線も大きく遠回りを強いられることになる。
同会の高橋摂事務局長は「寄港時の制限は仕方がないが、災害や事故など緊急時における避難経路確保の面からも常時通行できないのは不安が募る。施設や駐車場も含め、入出港のない300日あまりの有効活用方法を、市にはあらためて検討してほしい」と訴える。
市港湾課は「急な予定変更でクルーズ船が寄港する可能性もあるので、目的外の活用は考えていない」と話している。(小川俊之)