函館市教委は本年度、国の特別史跡・五稜郭跡内堀の石垣で、南西部分の修理に乗り出す。石垣が膨らんだり、ずれたりして放っておけば崩落する可能性もあることから、石垣を積み直す。秋口にも工事を始め、2018年の冬に入る前に完了予定。また、本年度中に石垣全体の改修計画も策定し、環境整備を図るための改修工事に順次着手する考えだ。
市教委によると、作業範囲は200平方メートル程度。堀の水位を下げて確認したところ、当初計画より傷んだ箇所が新たに分かり、作業範囲が広がった。本年度予算に1億4500万円を計上したが、事業費はさらに膨らむ見通し。国が整備に要する対象経費の2分の1を補助する。
工事は、止水のため矢板(鉄板)で作業箇所を囲んで水抜きをする。残った水はポンプも使って排水し、根石の状態を確認しながら、石を1個ずつ取り外して同じ位置に同じ石を積み直す。石が割れたり、欠損したりした場合は同じ組成の新しい石を入れる。重機を搬入するため、堀をまたぐ仮設の橋を架ける予定。
市教委は05年度に実施した石垣全体の調査で、計170カ所の危険箇所を確認。しかし、14年3月にはこれに該当していなかった郭内南東部の石垣が幅約10メートル、高さ2メートルにわたって崩落、北海道新幹線開業前の昨年3月に修理が終わった。
今回修理する石垣は劣化が最もひどく、観光客が多い公園入り口の正面に当たるため、先行して工事を進める。五稜郭公園の一の橋広場で7月14日~8月12日の金・土曜に計8回開かれる函館野外劇の上演には影響はないとしている。
石垣全体の改修計画は傷み具合をランク分けした上で、優先順位の高いものから修理する見込み。南西部分について、市教委文化財課は「国の補正予算の動き次第だが、できるだけ早く着手したい」としている。(山崎大和)