【北斗】かつて上野(東京)―札幌間を往復していたJR寝台特急「北斗星」の客車を活用した簡易宿泊所(ゲストハウス)が、4月22日に市茂辺地地区でオープンする。新型コロナウイルスの影響で2度の開業延期を経て、念願の宿泊利用が実現する。昨年12月上旬に車両の塗装など改修工事が完了、鉄道ファンの願いを再現した事業がいよいよ動き出す。
北斗星は、北海道新幹線開業などの理由で2015年8月に運行を終え、16年7月に市民団体「北斗の星に願いをプロジェクト推進委員会」がクラウドファンディング(CF)などで集めた資金を基に、旧茂辺地中学校グラウンドに客車2両を移設。5~11月に車両内を一般公開していたが、コロナ禍以降は休止している。
乗車経験のあるファンから「思い出が詰まった車両にまた泊まりたい」という声が上がり、宿泊施設として整備し、再出発することになった。今月中にも、渡島保健所から簡易宿泊所営業の許可が下りる予定。
宿泊は2両のうち7室(1室2人)が利用でき、定員は14人。当初は2両で最大30人の宿泊を計画していたが、密を避けるため人数を減らした。料金は1室1万円。シャワー室や2段ベッドは北斗星時代のまま使用できる。
また、北斗星を眺めながら泊まれる宿として広場にトレーラーハウス2棟を設置。貸し切りタイプで、1棟3人が利用でき、定員は6人。1棟2万円で貸し出す。内部はベッドやテレビ、ユニットバス、テラスを備え、高級宿を想定している。収益は車両の維持管理費に充て、定期的に修繕を進める。
公衆無線LAN「Wi―Fi(ワイファイ)」と監視カメラは既に設置済みで、広場のカフェを受け付けにし、受け付けや部屋の清掃を担う人を地元から採用する。
車両は移設時から老朽化が進んでおり、屋根の塗り替えは一度施したものの、それ以外は資金面の問題もあり、手つかずだった。今回は宿泊利用に向け、昨年10月下旬~同12月上旬に車両の塗装や雨漏りの補修、窓ガラスの交換、給排水設備の改修、空調設備の新設など「お色直し」を終えた。
総事業費は3000万円。3月にも、インターネットの仲介サイトを通じ予約を受け付ける。特急列車のため窓が開かず、車内の換気ができないため一般公開の休止を続け、当面は宿泊利用のみとする考え。
事業を手掛ける合同会社「靑(あお)」(北斗)の代表社員、澤田導俊さん(42)は「市三ツ石で構想が進むワイナリーや、トラピスト修道院など観光地にも近く、列車ファンだけでなく、観光客の利用も期待できる。家族で宿泊できる場所がない利点も生かし、北斗の新たな拠点にしたい」と意気込んでいる。(山崎大和)