函館市元町の観光名所で国の重要文化財に指定されている「函館ハリストス正教会」は今冬から、耐震補強を含めた保存修理工事に入る。大規模修復工事は、1988年以来32年ぶり。聖堂の象徴である銅板の緑屋根を全面ふき替えするほか、正面の玄関上にそびえる鐘塔を補強する計画で、22年冬の完了を目指す。(山田大輔)
同教会は1860(安政7)年、初代ロシア領事館の付属聖堂として建設。明治時代の大火で焼失後、1916(大正5)年に再建。床面積は約150平方メートル、しっくい塗りの白い壁と緑屋根が市民に親しまれ、83年に重要文化財の指定を受けた。
工事の総事業費は約4億5000万円で、大部分を国などが補助する。市教委などによると、築100年以上経過した建物は外壁がはがれるなど老朽化が進行。前回の修復工事で屋根は傷んだ箇所のみ補修したが、今回は全面的に手を加える。銅板のふき替えは現在の緑の風合いを再現するため、他の重要文化財の修復で培った技術を活用するという。
耐震補強は高さ25メートルの鐘塔で実施。2017年に行った耐震診断を基に、鐘の周囲に鉄骨の枠を設置するなどの対策を講じる。
着工は年明けを予定。例年、クリスマス後から翌年3月ごろまで臨時休館しているが、来年はそのまま聖堂内の見学ができなくなる。聖堂の周りに工事の足場が組まれる来年6月ごろからは外観も見られなくなる見通し。
同教会の児玉慎一神父は「皆さまの献金を大切に使わせていただきたい」と話している。